「パンと暮らし ぷくぷく亭」の奈良シュトレン2024
2024年、皆様にとってはどのような1年でしょうか?
私としては、パリオリンピックや大谷翔平選手の活躍など活気のある話題もあった一方で、
国内に目を向けると、元旦の能登半島地震と9月に再び能登半島を襲った豪雨。
復興支援の不足やお米がスーパーから消えるという米不足…
日本という国が、自国を守っていく、国民を守っていく力の弱体化が気になる1年となりました。
戦いや病気に恐れ慄くのでなく、まず安全な食べ物、水が自国で供給でき、平和で心穏やかな日々を過ごしたい。
そのために、土の匂い、風の感触、稲穂の色、草木の音、太陽の温かさに感謝をもって健やかに生活したと切に願います。
その心があれば、家族や友人、コミュニティの仲間への感謝の念を送らざるを得ませんし、そこに武器・武装は一切不要です。
私はこの奈良の地で生まれ育ち、平城旧跡で昔も今もよく遊んだり、走ったりしています。
奈良盆地にある、この広い平城旧跡で感じるのは、今昔変わらない、四季折々の朝日と夕ぐれの美しさ、宇宙とも繋がるこの大空・自然の壮大さです。
先人達もこの景色を同じように見上げ、感じていたのだろうかと想いを馳せます。
きっと奈良を都に選んだ人も、この地がエネルギーのある場所だと感じていたに違いありません。
より五感が研ぎ澄まされていた感度の高い昔の先人達なら、私以上に、この土地の持つエネルギーを確信していたと想像します。
そんな「奈良」の地から、平和の祈りとしてのシュトレンを
健やかな幸せの循環の象徴としてのシュトレンを、この地に生まれた感謝の気持ちを込めて皆様にお届けできたらと思います。
素材×奈良のStory
大和の和紅茶
奈良は、大和茶の産地。お茶所でありながら、隣接する京都・宇治茶のブランドに押されて、安く買いたたかれてしまい、このままでは大和茶は消えてしまいます。大和茶は京都のお茶に引けを取りません。ぜひ、美味しいお茶を知っていただく機会になると嬉しいです。
今回は、6年ほどお付き合いのある、田原ナチュラルファームさんの和紅茶を使用しました。
奈良市田原地区で農薬を使わずにお茶を栽培されています。生産者の福井佐和さんのお人柄のような、やさしい和紅茶の香りが、シュトレンとよく合います。
スパイス・ナッツは山椒と大豆
スパイスやナッツは今まで、外国産の有機の食材を使用していましたが、国産・奈良近郊のもので作れないかということで、今回は奈良産山椒をスパイス代わりに、ナッツの代わりに岡山県の自然栽培農家つちのわさんの無農薬大豆を使用しました。
奈良県産の大豆を探していたところ、エミニニオーガニックファームさん(以下、エミニニさん)のご紹介で、つちのわの川口さんとのご縁をいただきました。
エミニニさんは、奈良の平群で耕作放棄地を再び耕し、美味しいお米を沢山作って下さっています。
米不足となった今年、これは、私も含め、日本人が日本の米農家さんを買い支えてこなかったことで起きたのだと思いました。だからこそ、エミニニさんのような農家さんは、これからの日本にはなくてはならない農家さんだと思っています。そんなエミニニさんからのご紹介いただいた農家さんなら間違いない!と思った次第です。
大豆とのご縁/オーガニックファームエネミミ(お米)
https://www.instagram.com/eminini_organic_farm
https://eminini-organic-farm.stores.jp
山椒を使うことをひらめいたのは、竹アーティストの三橋玄さん主催の明日香村での竹林整備に参加させていただいた時です。
その竹林に、山椒の木がありました。山椒を身近に感じたことは、それまでなかったのですが、日本にも、奈良にも、スパイスになるものはあるなと改めて感じ、シュトレンにも使ってみることにしました。
今まで、スパイス=輸入するものという固定概念が私の中にありましたが、日本・奈良の良いものを活かしていくという考え方のシフトは、嬉しいギフトとなりました。
日本には、竹、麻などの素晴らしい植物を活かした生活文化がありました。
便利なアイテムを海外から輸入するのも一つですが、国内・奈良にある素晴らしい文化を再発見していくことに、私は悦びと豊かさを感じます。
柚子ピール/やまぞーえ
https://www.yama-zoe.com/
ラム酒の代わりに自然栽培米から作った清酒
シュトレンは、ドライフルーツを国産ラム酒で漬けておきます。
当店は今まで、国産ラム酒を使用していましたが、今回は奈良・都祁で羽間農園さんが丹精込めて作った自然栽培米から使った清酒を使用しましす。
これは正直言って、贅沢すぎます。本当は清酒として呑んでいただきたい一品。
香りも良く、とってもマイルドで美味しい清酒なんです。それをシュトレンに使うなんで・・・でも、奈良の清酒といえば…で一番に思い浮かんだこのお酒を使わせていただきたかったのです。
ドライフルーツは干し柿・柚子
柚子ピールは、奈良・山添村のやまぞーえさんから譲っていただきました(ゆずだけにw)。
山の暮らしを未来につなぐことをスローガンに、地域密着で、古民家活用やものづくり・カフェなど多岐に渡る活動をされているやまぞーえさんで作られた大柚子・姫柚子の2種類の柚子ピールを使用します。
干し柿を使いたいと思ったのが今年の8月頃。
干し柿のシーズンは11月頃からですから、試作段階で干し柿を入手するのに苦労しました。
そんな時に助けていただいたのは、先程のやまぞーえさん。
ご近所のおばあちゃん達から干し柿を集めてきてもらい試作を行うことができました。
例年だと11月頃から出回ると聞いていた干し柿でしたが、暑い時期が長く、冷え込みが遅かったので、商品を作る際の奈良県産の干し柿の出来上がりを待つことも、昨年の物を見つけることもできませんでした。
今年は、奈良県産の干し柿が出来上がるまでは、昨年から保存されていた長野県産の干し柿を使用させていただきます。
できる限り奈良の食材を使用したいと考えていたので残念な気持ちもありますが、来年にはさらに奈良度が増すと思うとそれはそれで楽しみでもあります。
一方で視点を変えると、外国産のドライフルーツだったのものが、すべて国産になっていう意味では、取り組んだ甲斐があるとも思っています。
実はドライの柿を作って試したりもしたのですが、やはり干し柿の方が、甘味も旨味もしっかりとあり美味しいと感じました。
日本人のDNAに染み付いた、昔ながらの味なのでしょうか。ぜひ、「奈良シュトレン」となっていくプロセスを一緒に見守っていただけると幸いです。
定番の小麦と平飼い卵
当店のパンを作る時にも使用している、奈良・天理のモンポタジェファームさんの有機レベルの全粒粉使用しています。
奈良県産全粒粉100%も試みましたが、他の素材との味のバランスを考え、10%の使用としています。
また、卵黄は奈良・風雅ファームさんの平飼い卵を使用しています。お米などの飼料にしたあっさり系卵黄です。
卵/風雅ファーム
https://www.instagram.com/koto_fuga_farm
https://www.the-satoyama.or.jp/fugafarm.html
全粒粉/モンポジェファーム
https://www.instagram.com/monpotager.yuuki
パン職人×シュトレン
僕がビゴの店で働いていた約12年前に初めてシュトレンというものに出会い、今まで様々なシュトレンを食べてきました。シュトレンも千差万別、お店の特徴が出るものです。
ぷくぷく亭の奈良シュトレンは、奈良県で採れた小麦、干し柿、姫柚子、大柚子、粉山椒、和紅茶を使用して作ります。
シュトレン・パンの材料としては珍しい、大豆や粉山椒を使用しており、試作段階では、この組み合わせで本当に美味しいシュトレンができるのかワクワク、ドキドキでした。
今回、奈良シュトレンを作る製法では、レーズン酵母中種に麻炭を練り込み旨みを出してから本捏ねに使用しています。本捏では発酵バターを粉に対して40%と贅沢に使用しています。
和紅茶の香り、粉山椒の香り、バターの風味。
干し柿、柚子ピール、大豆の風味と旨み。
試作を繰り返し、予想以上の美味しいシュトレンになりました。
それぞれの香り、旨味、風味と共に、調和を楽しんでください。
また、時間が経つにつれて熟成していく旨みも併せて感じて頂けたら嬉しいです。